5次多項式 $x^5+ax^4+b$ の判別式と $x^5-x^4+1$ の Galois 群の決定

概要とインフォーマルな解説:

この記事では、有理数体 $\mathbb{Q}$ 上の5次多項式 $f(x)=x^5-x^4+1$ の Galois 群を決定するプロセスを詳細に解説します。その計算過程で必要となる、一般の5次多項式 $x^5+ax^4+b$ の判別式の公式とその導出についても詳しく追加しました。

有限体上の還元(モジュロ演算)や終結式を用いた判別式の計算といった基本手法から出発し、最終的に Galois 群が5次対称群 $S_5$ になることを見事に証明します。また、その理論的支柱となる「Dedekind の定理」についても、代数的整数論の基礎事項を交えながら自己完結的 (self-contained) な証明を与えています。なお、以下の数学的な定義や証明は、厳密性を保つために「だ・である調」で記述します。

1. 基礎概念の定義と準備

具体的な計算に入る前に、議論の前提となるいくつかの代数学の基本概念を定義しておく。

定義: 既約 (irreducible) と可約 (reducible) 体 $K$ 上の多項式 $f(x)$ が、より次数の低い2つの $K$ 係数多項式の積として $f(x) = g(x)h(x)$ と表せないとき、その多項式は $K$ 上で既約 (irreducible) であるという。逆に、そのような積に分解できる場合は可約 (reducible) であるという。
定義: 最小分解体 (splitting field) と Galois 群 (Galois group) 多項式 $f(x) \in \mathbb{Q}[x]$ のすべての根 $\alpha_1, \dots, \alpha_n$ を有理数体に添加した体 $L = \mathbb{Q}(\alpha_1, \dots, \alpha_n)$ を $f(x)$ の最小分解体 (splitting field) と呼ぶ。体拡大 $L/\mathbb{Q}$ の自己同型群を Galois 群 (Galois group) と呼び、$\mathrm{Gal}(L/\mathbb{Q})$ で表す。この群の各元は根の置換を引き起こすため、自然に $n$ 次対称群 (symmetric group) $S_n$ の部分群 $\mathrm{Gal}(L/\mathbb{Q}) \subset S_n$ と見なすことができる。

2. $\pmod 3$ における $f(x) = x^5 - x^4 + 1$ の既約性

多項式 $f(x) = x^5 - x^4 + 1$ が、要素数 3 の有限体 $\mathbb{F}_3 = \mathbb{Z}/3\mathbb{Z} = \{0, 1, -1\}$ 上において既約 (irreducible) であることを示す。

$f(x)$ は5次式であるため、もし $\mathbb{F}_3$ 上で可約 (reducible) であると仮定すると、その因数分解には必ず1次式または2次式が含まれなければならない(因数の次数の和が $5 = 1 + 4 = 2 + 3$ となるため)。したがって、$f(x)$ が1次因数も2次因数も持たないことを示せば、既約性が証明される。

ステップ1:1次因数を持たないことの証明

因数定理より、多項式が1次因数を持つことと、その体に根を持つことは同値である。有限体の要素全体(乗法群 $\mathbb{F}_3^\times = \mathbb{F}_3 \smallsetminus \{0\}$ の元と $0$)を $f(x)$ に代入し、$\pmod 3$ で $0$ になるか確認する。

いずれの場合も根とならないため、$f(x)$ は1次因数を持たない。

ステップ2:2次因数を持たないことの証明

もし $f(x)$ が2次因数を持つならば、$\mathbb{F}_3$ 上のモニックな既約2次多項式で割り切れるはずである。モニック2次多項式 $x^2 + ax + b$ ($a, b \in \mathbb{F}_3$) のうち既約なものを探す。定数項 $b=0$ だと $x$ を因数に持ち可約となるため、$b=1$ または $b=-1$ である。これらに $x=0, 1, -1$ を代入し、根を持たないものを抽出すると以下の3つが得られる。

  1. $p_1(x) = x^2 + 1$
  2. $p_2(x) = x^2 + x - 1$
  3. $p_3(x) = x^2 - x - 1$

これらで $f(x)$ を割った余りが $0$ にならないことを確認する。割り算の代わりに剰余環 $\mathbb{F}_3[x]/(p_i(x))$ での計算、すなわち $p_i(x) \equiv 0$ として次数を下げる方法を用いる。

すべての既約2次多項式で割り切れないため、$f(x)$ は2次因数を持たない。以上より、$f(x)$ は $\pmod 3$ で既約 (irreducible) である。

3. $\pmod 2$ における $f(x) = x^5 - x^4 + 1$ の素因子分解

次に、要素数 2 の有限体 $\mathbb{F}_2 = \{0, 1\}$ 上において $f(x)$ の素因子分解 (prime factorization) を行う。$\mathbb{F}_2$ では $-1 \equiv 1$ であるため、$f(x) \equiv x^5 + x^4 + 1 \pmod 2$ となる。

まず1次因数(根)の有無を確認する。

根を持たないため、1次因数は存在しない。したがって、可約であるとすれば「2次式 $\times$ 3次式」の形に分解される。

$\mathbb{F}_2$ 上のモニック既約2次多項式を探す。定数項は $1$ でなければならず、$x^2+1$ は $(x+1)^2$ と可約であるため、根を持たない唯一の既約2次多項式は $x^2 + x + 1$ のみである。
実際に多項式の割り算(筆算)を実行すると、次のように割り切れる。

$$x^5 + x^4 + 1 = (x^2 + x + 1)(x^3 + x + 1)$$

商として得られた3次多項式 $g(x) = x^3 + x + 1$ の既約性を確認する。3次式が可約であれば必ず1次因数(根)を持つが、$g(0) = 1 \not\equiv 0$、$g(1) = 3 \equiv 1 \not\equiv 0$ より根を持たない。ゆえに $g(x)$ も既約である。
結論として、$\pmod 2$ における素因子分解は以下の通りとなる。

$$f(x) \equiv (x^2 + x + 1)(x^3 + x + 1) \pmod 2$$

4. 多項式 $x^5+ax^4+b$ の判別式の公式とその導出

多項式の Galois 群を解析するにあたり、方程式が重根を持つかどうかの判定や分岐の様子を知るために「判別式」が重要な役割を果たす。ここでは一般化された5次多項式 $F(x) = x^5 + ax^4 + b$ について、その判別式の公式を導出する。

定義: 判別式 (discriminant) と終結式 (resultant) $n$ 次モニック多項式 $f(x)$ の根を $\alpha_1, \dots, \alpha_n$ とするとき、判別式 $\Delta(f)$ は根の差の積の平方 $\prod_{1 \le i < j \le n} (\alpha_i - \alpha_j)^2$ として定義される。これは導関数 $f'(x)$ との Sylvester 終結式 (resultant) $R(f, f')$ を用いて、$\Delta(f) = (-1)^{\frac{n(n-1)}{2}} R(f, f')$ と計算できる。

終結式は $R(f, g) = \text{lc}(g)^{\deg f} \prod_{\alpha_i} g(\alpha_i) = (-1)^{\deg f \deg g} \text{lc}(f)^{\deg g} \prod_{\beta_j} f(\beta_j)$ という性質を持つ($\alpha_i$ は $f$ の根、$\beta_j$ は $g$ の根、$\text{lc}$ は最高次係数)。

$F(x) = x^5 + ax^4 + b$ の次数は $n=5$ であるため、判別式の符号は $(-1)^{\frac{5(5-1)}{2}} = (-1)^{10} = 1$ となる。したがって、$\Delta(F) = R(F, F')$ が成り立つ。

終結式の対称性より、$R(F, F') = (-1)^{\deg F \cdot \deg F'} R(F', F) = (-1)^{5 \times 4} R(F', F) = R(F', F)$ となる。したがって、$F'(x)$ の根を求めて $F(x)$ に代入する形で終結式を計算すればよい。

$F(x)$ の導関数は $F'(x) = 5x^4 + 4ax^3 = x^3(5x + 4a)$ である。これより、$F'(x)$ の根は以下の4つとなる:

$$\beta_1 = 0, \quad \beta_2 = 0, \quad \beta_3 = 0, \quad \beta_4 = -\frac{4a}{5}$$

終結式の性質を用いて $R(F', F)$ を計算する。$F'(x)$ の最高次係数は $5$ であり、次数は $4$、そして $F(x)$ の次数は $5$ であるため:

$$R(F', F) = 5^5 \cdot F(\beta_1) \cdot F(\beta_2) \cdot F(\beta_3) \cdot F(\beta_4)$$ $$R(F', F) = 3125 \cdot \{F(0)\}^3 \cdot F\left(-\frac{4a}{5}\right)$$

ここで、$F(x)$ にそれぞれの根を代入した値を計算する。

これらの値を終結式の式に代入する。

$$\Delta(F) = R(F', F) = 3125 \cdot b^3 \cdot \left( \frac{256a^5}{3125} + b \right)$$ $$\Delta(F) = b^3 (256a^5 + 3125b) = 256a^5b^3 + 3125b^4$$

以上により、5次多項式 $x^5+ax^4+b$ の判別式を与える公式は次のように導出された。

$$\Delta(x^5+ax^4+b) = b^3(256a^5 + 3125b)$$

5. 判別式の計算と Galois 群の決定

前節で求めた公式を利用して、対象の多項式 $f(x) = x^5 - x^4 + 1$ の判別式を計算する。この多項式は $a = -1$、$b = 1$ のケースに該当する。

$$\Delta(f) = 1^3 \cdot (256(-1)^5 + 3125(1)) = -256 + 3125 = 2869$$

得られた判別式 $2869$ の素因数分解を行う。$2869 \div 19 = 151$ を得る。$\sqrt{151} < 13$ であり、$11$ 以下の素数 $\{2, 3, 5, 7, 11\}$ のいずれでも割り切れないため、$151$ は素数である。よって判別式の素因数分解は以下のようになる。

$$\Delta(f) = 19 \times 151$$

これまでの結果を統合し、最小分解体 $L$ の Galois 群 $G = \mathrm{Gal}(L/\mathbb{Q})$ を決定する。ここで、次のセクションで証明する Dedekind の定理 を用いる。

判別式が $\Delta(f) = 19 \times 151$ であるため、素数 $p=2, 3$ は判別式を割り切らない。したがって、$\pmod 2$ および $\pmod 3$ での分解情報を Dedekind の定理に安全に適用することができる。

  1. 5次巡回置換 (5-cycle) の存在:
    $\pmod 3$ において $f(x)$ は次数 5 の既約多項式であった。Dedekind の定理より、$G$ は長さ 5 の巡回置換 (cycle) を含む。これより $f(x)$ は $\mathbb{Q}$ 上でも既約であり、$G$ は $S_5$ の推移的部分群 (transitive subgroup) であることがわかる。
  2. 互換 (transposition) の存在:
    $\pmod 2$ において $f(x) \equiv (x^2+x+1)(x^3+x+1)$ と分解された。次数が2と3の既約因子の積であるため、Dedekind の定理より、$G$ は巡回置換の型 (cycle type) が $(2, 3)$ である元 $\sigma = \tau \rho$ を含む。ここで $\tau$ は長さ2の巡回置換(すなわち互換)、$\rho$ は長さ3の巡回置換であり、互いの作用する要素の集合の積集合は空集合 $\varnothing$ である。
    互いに素な置換は可換であるため、$\sigma$ の3乗を計算すると $\sigma^3 = \tau^3 \rho^3$ となる。$\tau$ の位数は2、$\rho$ の位数は3であるから、$\tau^3 = \tau$ かつ $\rho^3 = e$(単位元)となる。ゆえに $\sigma^3 = \tau$ となり、$G$ は互換 $\tau$ を含むことが示された。

群論の定理として、「素数 $q$ に対し、$S_q$ の推移的部分群が互換を含むならば、その群は $S_q$ 全体に一致する」という事実が知られている。本問では $q=5$ であり、条件をすべて満たすため、

$$\mathrm{Gal}(L/\mathbb{Q}) = S_5$$

であることが完全に証明された。

6. Dedekind の定理の自己完結的 (self-contained) な証明

定理 (Dedekind) 整数係数のモニック多項式 $f(x)$ の判別式を $\Delta(f)$ とする。素数 $p$ が $\Delta(f)$ を割り切らないとき、$f(x) \pmod p$ が $\mathbb{F}_p$ 上で次数 $d_1, d_2, \dots, d_k$ の既約多項式の積に分解されるならば、$f(x)$ の $\mathbb{Q}$ 上の Galois 群 $G \subset S_n$ は、互いに素な巡回置換の積として巡回置換の型 (cycle type) が $(d_1, d_2, \dots, d_k)$ である元を含む。
証明

多項式 $f(x) \in \mathbb{Z}[x]$ の $\mathbb{Q}$ 上の最小分解体を $K$ とし、Galois 群を $G = \mathrm{Gal}(K/\mathbb{Q})$ とする。$K$ の整数環 (ring of integers) を $\mathcal{O}_K$ とする。$f(x)$ の根 $\alpha_1, \dots, \alpha_n$ はモニックな整数係数多項式の根であるため、代数的整数であり $\alpha_i \in \mathcal{O}_K$ を満たす。

有理素数 $p$ の生成するイデアル $p\mathcal{O}_K$ の素イデアル分解を考え、その素イデアル (prime ideal) の1つを $\mathfrak{P}$ とする($\mathfrak{P} \subset \mathcal{O}_K$, $\mathfrak{P} \cap \mathbb{Z} = p\mathbb{Z}$)。剰余体 (residue field) $k_{\mathfrak{P}} = \mathcal{O}_K/\mathfrak{P}$ は、有限体 $\mathbb{F}_p$ の有限次拡大体となる。

Galois 群 $G$ は $\mathcal{O}_K$ の素イデアルに自然に作用する。$\mathfrak{P}$ をそれ自身に写す $G$ の元からなる部分群を分解群 (decomposition group) と呼び、$D_{\mathfrak{P}} = \{\sigma \in G \mid \sigma(\mathfrak{P}) = \mathfrak{P}\}$ と定義する。$\sigma \in D_{\mathfrak{P}}$ は $k_{\mathfrak{P}}$ 上の自己同型を誘導するため、自然な群準同型 $\phi: D_{\mathfrak{P}} \to \mathrm{Gal}(k_{\mathfrak{P}}/\mathbb{F}_p)$ が得られる。

定理の仮定 $p \nmid \Delta(f)$ は、多項式が重根を持たないこと、すなわち拡大 $K/\mathbb{Q}$ において素数 $p$ が不分岐 (unramified) であることを意味する。代数的整数論の基本定理により、不分岐であることと $\phi$ の核である惰性群 (inertia group) $I_{\mathfrak{P}}$ が自明($I_{\mathfrak{P}} = \{ \mathrm{id} \}$)であることは同値である。さらに $\phi$ は全射であるため、同型 $D_{\mathfrak{P}} \cong \mathrm{Gal}(k_{\mathfrak{P}}/\mathbb{F}_p)$ が成立する。

有限体の Galois 群 $\mathrm{Gal}(k_{\mathfrak{P}}/\mathbb{F}_p)$ は、元を $p$ 乗する Frobenius 自己同型 (Frobenius automorphism) $\mathrm{Frob}_p(x) = x^p$ によって生成される巡回群である。この同型対応により、$D_{\mathfrak{P}} \subset G$ の中に $\mathrm{Frob}_p$ に対応する唯一の元 $\sigma_{\mathfrak{P}}$ が存在する。これを Frobenius 元と呼び、すべての $x \in \mathcal{O}_K$ に対して $\sigma_{\mathfrak{P}}(x) \equiv x^p \pmod{\mathfrak{P}}$ を満たす。

次に、この $\sigma_{\mathfrak{P}}$ の根 $\alpha_i$ に対する作用を調べる。$\pmod{\mathfrak{P}}$ での還元を $\bar{\alpha}_i = \alpha_i \pmod{\mathfrak{P}}$ と表す。$p \nmid \Delta(f)$ より、還元された多項式 $\bar{f}(x)$ も $\mathbb{F}_p$ 上で重根を持たない。すなわち $\bar{\alpha}_1, \dots, \bar{\alpha}_n$ は $k_{\mathfrak{P}}$ においてすべて相異なる。このため、$\alpha_i$ に対する $\sigma_{\mathfrak{P}}$ の置換作用と、$\bar{\alpha}_i$ に対する $\mathrm{Frob}_p$ の置換作用は完全に同型になる:
$$\sigma_{\mathfrak{P}}(\alpha_i) = \alpha_j \iff \mathrm{Frob}_p(\bar{\alpha}_i) = \bar{\alpha}_j$$

有限体 $\mathbb{F}_p$ 上で $\bar{f}(x)$ が既約多項式 $\bar{g}_m(x)$ の積に分解されているとする。$\bar{\alpha}_i$ はいずれかの $\bar{g}_m(x)$ の根である。$\bar{g}_m(x)$ は $\mathbb{F}_p$ 係数なので、$\mathrm{Frob}_p(x) = x^p$ を作用させても $\bar{g}_m(x)$ の根の集合はそれ自身に写される。$\bar{g}_m(x)$ が次数 $d_m$ の既約多項式であることから、その根に $\mathrm{Frob}_p$ を繰り返し適用すると $d_m$ 回で元に戻り、その部分集合上で長さ $d_m$ の巡回置換として作用する。

全体として、根の集合 $\{\bar{\alpha}_1, \dots, \bar{\alpha}_n\}$ は各 $\bar{g}_m(x)$ の根の集合という互いに素な(共通部分が $\varnothing$ である)部分集合に分割され、$\mathrm{Frob}_p$ はそれぞれの部分集合上で長さ $d_1, \dots, d_k$ の巡回置換として作用する。元の Galois 群 $G$ に含まれる $\sigma_{\mathfrak{P}}$ も全く同じ置換構造を持つため、その巡回置換の型は $(d_1, d_2, \dots, d_k)$ となる。これで定理が証明された。 $\blacksquare$

参考文献